「新・初期装備」シリーズもいよいよ最終回です。①でクレジットヒストリーを育てるJAL USAカード、②で渡米直後の決済をつなぐWiseを紹介してきました。今回は、給与の受け取りも家賃の支払いもカードの引き落としも——生活のお金まわり全部の土台になる“メイン銀行”のお話です。
そして今、そのメイン銀行の現実的な王道がBank of America(バンク・オブ・アメリカ/通称バンカメ)です。なぜバンカメなのか。それを語るには、まず駐在員界隈で起きた“ある事件”から始めなければいけません。
【背景】“ユニオンバンク事件”——駐在員の王道が消えた日
ひと昔前、ダラス駐在員のメイン銀行といえば、ほぼ一択でした。三菱UFJ系の「ユニオンバンク(MUFG Union Bank)」です。日本にいるうちから口座開設の相談ができ、日本語サポートも手厚く、駐在員にとって“安心の定番”でした。
ところが2022年、そのユニオンバンクの米国リテール(個人向け)部門がU.S. Bank(USバンク)へ売却されました。三菱UFJブランドの米国の個人向け銀行、という選択肢が事実上なくなってしまったのです。
「渡米前から相談できて、日本語が通じる安心の銀行」という、長年の王道ルートが消滅。これが駐在員の間で語られる、いわゆる“ユニオンバンク事件”です。新しく赴任する人は、メイン銀行をゼロから選び直す必要に迫られました。
その中で、「誰でも・自分の力で開設できる現実的な王道」として浮上したのが、Bank of Americaです。
なぜBank of Americaが“新・王道”なのか
- 全米最大級の店舗・ATM網:ダラス近郊どこに住んでも支店やATMが近く、現金の入出金や窓口相談に困らない
- SSNがなくても口座開設できる:渡米直後、SSN取得前でも開設できる
- 無料の言語通訳サービスがある:窓口・電話で日本語の通訳サポートを受けられ、英語に自信がなくても手続きできる
なお、SSN不要で口座を作れるのはバンカメ“だけ”ではありません。Chase・Wells Fargoなど大手はおおむね対応しています(法律上、銀行は本人確認ができればよく、SSNは必須ではないため)。その中でバンカメを推す決め手は、SSN不要という“最低条件”を満たしたうえで、日本語の通訳サービスとテキサスでの店舗網まで揃うことです。
【寄り道コラム】出光佐三とBank of America
「バンカメと言われても、正直ピンとこない」という方へ。少しだけ寄り道させてください。実は日本とBank of Americaの間には、知る人ぞ知る“熱い歴史”があります。
小説『海賊とよばれた男』のモデルになった実業家・出光佐三。戦後、石油メジャーの妨害で四面楚歌だった出光興産は、1957年、徳山製油所の建設に巨額のドル資金を必要としていました。国内の銀行が融資に及び腰になるなか、唯一「やりましょう」と決断したのがBank of America。同行の副社長カラン氏が、約1,000万ドルもの融資にゴーサインを出したと伝えられています。
出光はその製油所を、通常2年はかかる工事をわずか10ヶ月で完成させ、世界を驚かせました。担保や肩書きではなく、人と志を見て決断する——そんな逸話を持つ銀行です。新天地での最初のメイン銀行がそこ、というのは、ちょっと縁起がいい話だと思いませんか。
しろ【渡米前〜直後】口座開設のステップ
Bank of Americaの口座は、基本的に渡米後、アパートの住所が決まってから現地の店舗で開設します。日本からのオンライン開設は難しいので、渡米直後の数週間は②のWiseでつないでおきましょう。
アパート(住所)を確定する。住所が分かる書類が口座開設に必要になります
必要書類をそろえる:パスポート / ビザ / 身分証明書2種類(うち1つは住所が確認できるもの)
近くのBank of America支店へ。事前に来店予約をしておくとスムーズ。英語が不安なら通訳サービスを使いたいと伝える
当座預金(Checking)口座を開設。デビットカードは後日、自宅に郵送されます
SSNが届いたら、支店または電話であらためてSSNを登録する
SSNがなくても口座は開設できますが、SSNが届いたら必ず登録しましょう。未登録のままだと、利息の税務処理や一部サービスで不都合が出ることがあります。
【最初の数ヶ月】メイン銀行として育てる
口座ができたら、生活のお金まわりをバンカメに集約していきます。
- 給与の振込先(Direct Deposit)に指定:会社に口座情報を提出
- 家賃・電気・水道などの支払い元に設定
- ①JAL USAカードの引き落とし先に登録(Autopay設定)
- ②Wiseからの資金移動の着地点に
こうして給与・支払い・カード引き落としを一箇所に集めることで、お金の流れが見えやすくなります。
①②③で“お金の初期装備”が完成する
- ① JAL USAカード:クレジットヒストリーを育てる“踏み台”のクレジットカード
- ② Wise:渡米前に作れる米ドルの受け皿&日本送金ツール
- ③ Bank of America:給与・家賃・引き落としの本拠地となるメイン銀行
この3つがそろえば、駐在初期の「お金まわり」はひととおり完成です。①と②の記事もあわせてどうぞ。
Bank of Americaは“卒業”しない銀行
このシリーズで、①のJAL USAカードは「クレヒスが育ったら卒業するカード」、②のWiseは「メインから退いてもサブで使い続ける道具」と説明してきました。
③のBank of Americaは、その2つとは違います。卒業せず、駐在期間中ずっと付き合い続けるメイン銀行です。最後に手を離すのは、本帰国のときだけ。本帰国の3〜6ヶ月前から残高や自動支払いを整理し、すべての引き落としが終わってから口座を閉じる、という流れになります。
よくある質問
- Q. SSNがなくても本当に口座を開設できる?
-
できます。Bank of Americaは海外から来た人向けに、SSN不要での口座開設を案内しています。パスポート・ビザ・身分証明書2種類(住所が確認できるものを含む)を用意しましょう。
- Q. 英語に自信がなくても手続きできる?
-
大丈夫です。Bank of Americaには無料の言語通訳サービスがあり、窓口でも電話でも日本語の通訳を介して手続きを進められます。
- Q. 渡米前に日本から開設できる?
-
個人の当座預金口座を日本からオンラインで開設するのは基本的に難しいです。住所が決まってから現地店舗で開設するのが現実的なので、渡米直後の決済は②のWiseでつなぎましょう。
- Q. U.S. Bank(旧ユニオンバンク)ではダメ?
-
U.S. Bankも選択肢のひとつで、ユニオンバンクの口座はU.S. Bankに引き継がれました。ただしU.S. Bankはもともと西海岸・中西部に強い銀行で、テキサスでの店舗網はそれほど多くありません。店舗・ATM網の広さ、通訳サービス、駐在員コミュニティでの実績の多さから、これから新規に作るならBank of Americaをおすすめしています。
まとめ:新生活の最初の相棒に
ユニオンバンク事件で長年の王道が消えた今、誰でも・自分の力で開設できる現実的な新・王道メイン銀行が、Bank of Americaです。SSN取得前でも、英語に自信がなくても開設できます。
そして、国内銀行が断った融資を「人と志を見て」決断した——そんな歴史を持つ銀行でもあります。新生活の最初の相棒として、ちょっと誇らしい選択ではないでしょうか。
①JAL USAカード・②Wise・③Bank of America。この3点セットで、駐在生活の“お金の初期装備”はばっちりそろいます。あとは安心して、新しい毎日を始めてください。









