先日、クレジットカードの勧誘DMを止める手続きを紹介しました。あの記事の最後に「あれはなりすまし対策ではありません」と書いたので、今回はその本命のほうを取り上げます。
みんと


名前は強そうですが、やることは単純です。自分の信用情報を、新しい審査に使えない状態にしておくだけ。無料で、いつでも元に戻せます。
クレジットフリーズとは何か
アメリカで誰かがカードやローンを申し込むと、審査する会社は必ず信用情報会社に照会をかけます。この照会ができなくなるようにするのが凍結です。
照会できなければ審査も通りません。つまり、SSNや個人情報が漏れても、他人が勝手に新しい口座やカードを作れなくなります。なりすまし被害(identity theft)に対して、いちばん効く防御と言われているのがこれです。
凍結しても、いま持っているカードや銀行口座はこれまでどおり使えます。止まるのは「新規の審査」だけです。
似ている3つの手続きを整理する
この分野は名前が紛らわしく、混同されがちです。先に違いをはっきりさせておきます。


- 勧誘DMの停止… optoutprescreen.com の手続き。ポストに届く勧誘を減らすためのもので、防犯の効果はありません
- フラウドアラート… 「この人の審査をするときは本人確認をしてください」という注意書きを付ける。審査自体は止めない、ゆるめの対策です
- クレジットフリーズ… 審査そのものをできなくする。いちばん強い対策です
3つとも無料で、どれもクレジットスコアには影響しません。スコアが下がるのを心配してためらう必要はない、というのがまず押さえておきたい点です。
駐在員こそ、やっておく価値があります
正直に言うと、着任してすぐの駐在員は「クレヒスが薄いから狙われないだろう」と思いがちです。私もそう思っていました。
薄いからこそ、気づけない
クレジットヒストリーが薄いということは、普段から自分の信用情報を見ていないということでもあります。勝手に口座を作られても、気づくのは何か月も後。日本と違って、被害の発覚が遅れやすい環境にいます。
SSNは思ったより出回っている
アメリカでは、銀行・病院・保険・学校・アパートと、あらゆる場面でSSNを書かされます。そのどこかが情報漏洩を起こせば、自分の番号も流出リストに入ります。これは本人の注意深さではどうにもならない部分です。



SSNとITINの違いについては 【駐在の雑学③】SSNとITINの違い にまとめています。
やり方:4社(+1社)にそれぞれ申請する
ここが唯一の面倒な点です。勧誘DMの停止と違って、まとめて申請できる窓口はありません。1社ずつ、それぞれのサイトで手続きします。


各社のサイトで無料アカウントを作る:Equifax・Experian・TransUnionの3社が必須です。
本人確認を通す:氏名・住所・SSN・生年月日を入力し、過去の住所やローンについてのクイズに答えます。
フリーズを有効にする:アカウント画面から切り替えるだけです。オンラインなら1営業日以内に有効になります。
PINやログイン情報を保管する:解除するときに必要です。パスワード管理アプリに入れておいてください。
Innovisも凍結する:4社目です。知名度が低いぶん見落とされやすいので、ここも塞いでおくと安心です。
この手続きを代行すると称する有料サービスがありますが、必要ありません。各社の公式サイトから無料でできます。
解除は1時間で終わります
「凍結したら、いざカードを作るときに困るのでは」と思うかもしれません。ここは法律で時間が決められています。


オンラインまたは電話での解除は1時間以内に反映されます。郵送の場合は3営業日です。
解除には2つのやり方があります。
- 一時解除(temporary lift)… 「今日から3日間だけ」のように期間を決めて開ける。終われば自動で凍結に戻ります
- 完全解除(remove)… 凍結そのものを解く。またやりたくなったら再度申請します
普段は一時解除だけで足ります。カードを申し込む日に開けて、翌日には勝手に閉まっている、という運用です。
駐在員がつまずきやすい3つのこと
① 着任直後に凍結すると、生活の立ち上げが止まります
見落としがちですが、信用情報を照会するのはカード会社だけではありません。
- アパートの入居審査
- 電気・ガスの申し込み(デポジット額の判定に使われます)
- 携帯電話の新規契約
- 車のローン・リース
着任直後はこれらを一気にこなす時期なので、凍結するなら生活が落ち着いてからがおすすめです。凍結したまま申し込むと「審査できません」と言われ、原因が分からず時間を溶かすことになります。
② 本人確認のクイズに落ちることがあります
オンラインの本人確認では「過去に住んでいた住所は次のうちどれか」「この銀行のローンの月額はいくらか」といった質問が出ます。アメリカでの生活歴が短いと、材料が足りずに失敗しやすいです。
その場合は郵送での申請になります。手間はかかりますが、確実に処理されます。時間に余裕を持って始めてください。
③ 家族の分は家族ごとに必要です
信用情報は一人ひとり別なので、配偶者の分は配偶者が、自分でやる必要があります。
なお、16歳未満の子どもについては保護者が代わりに凍結できます。子どものSSNを使ったなりすましは発覚が極端に遅れるため、アメリカでは対策として知られています。
「そこまではちょっと」という人へ
凍結は強力ですが、その分だけ手間もかかります。もっと軽い選択肢がフラウドアラートです。
信用情報に「本人確認をしてから審査してください」という注意書きを付ける手続きです。1社に申請すれば、その会社が他の2社にも伝えてくれます。無料で、期間は1年間(更新可)です。
審査そのものは止まらないので、アパートや電気の申し込みを邪魔しません。着任してしばらくの期間は、まずこちらだけ入れておくという使い方が現実的だと思います。
なお、実際になりすまし被害に遭った場合は7年間の延長版が使えます。こちらには5年間、勧誘リストからも外されるという効果もついてきます。
よくある質問
- 凍結するとクレジットスコアは下がりますか?
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下がりません。凍結は信用情報へのアクセスを止めるだけで、スコアの計算とは無関係です。
- 凍結中でも自分のスコアは見られますか?
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見られます。自分で確認する分には制限がありません。カード会社が提供しているスコア表示機能もそのまま使えます。
- 凍結中に既存のカードは使えますか?
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使えます。止まるのは新規の審査だけです。すでに持っているカードの利用、限度額の管理、明細の確認はこれまでどおりです。
- 本帰国するときは解除すべきですか?
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むしろ凍結したままのほうが安全です。日本に帰ったあとにアメリカで何かを申し込む予定がないなら、凍結を残しておけば不正利用の入口を塞いだままにできます。ただしログイン情報は必ず保管しておいてください。
- 勧誘DMの停止だけでは足りませんか?
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目的が違います。DMの停止はポストを静かにするためのもので、なりすましは防げません。両方やっておくのが理想です(勧誘DMを止める方法)。
- 被害に遭ってしまったら?
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FTCの IdentityTheft.gov で被害の届出と復旧手順の作成ができます。ここで発行される報告書が、延長フラウドアラートの申請などに必要になります。
まとめ
- クレジットフリーズ=信用情報を凍結して、新しい審査をできなくする手続き
- 無料。スコアには影響しない。既存のカードもそのまま使える
- Equifax・Experian・TransUnionの3社は必須。Innovisも塞いでおくと安心
- 解除はオンラインなら1時間以内。一時解除を使えば自動で元に戻る
- 着任直後は避ける。アパート・電気・携帯の審査が止まってしまう
- 手間をかけたくないなら、まずフラウドアラート(無料・1年)から
アメリカ生活の防御は、一度やれば効き続けるものを先に済ませておくのが結局いちばん楽です。
同じ考え方の対策として、テキサスのスパム電話・ロボコール対策 と FICOスコアとは? もあわせてどうぞ。制度の一次情報は FTCの解説ページ が正確です。









