「バイトは扶養の範囲でやったほうがいいよね?」
娘のりんが本帰国してアルバイトを始めたとき、わが家もまずそう考えました。頭にあったのは年収130万円の壁。月にすると10万8千円くらいまで。そこを超えないようにシフトを調整してもらおう、と。
ところが、バイト先から「9月から会社の社会保険に入れます」と連絡が来て、あらためて調べ直したところ——大学を卒業した子の場合、130万円を守っても思ったほど得をしないことがわかりました。
しろ同じように「本帰国した子どものバイトと扶養」で迷っている方に向けて、わが家が調べたことを整理しておきます。
①「扶養」には、まったく別の2種類があります
まずここが出発点です。ひとことで「扶養」と言っていますが、中身はまったく違う2つの制度が並んでいます。
- 税の扶養(扶養控除):親の所得税・住民税が安くなる。得をするのは親
- 社会保険の扶養(被扶養者):子の健康保険料がタダになる。得をするのは子
この2つは判定も手続きも別々です。片方だけ外れることもあります。「扶養を外れる」と聞くと全部まとめて外れる気がしますが、そうではありません。ここが混ざると、話が一気にややこしくなります。


よく聞く「103万」「130万」「150万」といった数字がバラバラなのは、この2つの制度がそれぞれ別の基準を持っているからです。まず「どっちの話をしているのか」を分けると、ぐっと見通しがよくなります。
②「130万を守れば保険料タダ」は、配偶者だけの話です
ここが今回いちばんの気づきでした。
パートで働く奥さんが「130万円の壁」を気にするのは、扶養に入ると第3号被保険者になれるからです。第3号になると国民年金の保険料が0円。しかも払ったのと同じ扱いで、将来の基礎年金は満額もらえます。これは本当に大きい。だから壁を守る意味があります。
つまり子どもには第3号がありません。20歳を過ぎていれば、親の扶養に入っていても国民年金は自分で払う義務があります。


令和8年度の国民年金保険料は月17,920円。扶養に入って浮くのは健康保険料(月5,500円ほど)だけで、この17,920円は扶養に入っていても消えません。



③大学を卒業した瞬間、国民年金が「自分ごと」になります
学生のうちは学生納付特例という制度があって、申請すれば国民年金の支払いを先送りできます。20歳を過ぎた大学生の多くはこれを使っているはずです。
ところが卒業して学生でなくなった瞬間、この特例は使えなくなります。就職までの空白期間は納付猶予を申請できますが、申請しなければ月17,920円の請求が普通に届きます。
猶予も免除も「支払いが消える」わけではありません。特に納付猶予は、その期間が将来の年金額に1円も反映されません(受給資格の年数にはカウントされます)。10年以内なら追納できますが、3年目以降は加算金が上乗せされます。



本帰国直後の手続きはこちらの記事にまとめています。住民票・健康保険・年金の順番で進めるとスムーズです。
④実際に計算してみました
りんの場合、バイト代は月11万円ほど。この金額で比べてみました。


社会保険に入ると、健康保険料と厚生年金保険料が新しく引かれます。でも保険料の半分は会社が負担してくれますし、厚生年金に入ると国民年金は払わなくてよくなります(厚生年金の保険料に含まれる形になります)。
金額の差そのものは大きくありません。でも、これに加えて将来の年金に厚生年金分が上乗せされること、病気やケガで働けないときの傷病手当金が使えるようになることが付いてきます。傷病手当金は扶養に入っている家族(被扶養者)は対象外なので、これは自分で加入する人だけの権利です。
社会保険に入るメリットは「年金が増えるから」というより、会社が保険料の半分を出してくれるから、と考えるほうが実態に近いです。
⑤2026年10月から、金額の調整そのものが効かなくなります
もうひとつ、知っておきたい変化があります。
これまでバイトの社会保険加入は「週20時間以上」かつ「月額賃金8.8万円以上」(=年収106万円の壁)などの条件で判定されていました。ところが2026年10月から、この賃金要件が撤廃されます。
2026年9月まで:週20時間以上 + 月8.8万円以上 + 従業員51人超 などで加入
2026年10月から:金額の条件が消え、「週20時間以上」かどうかが主な判定基準になる
つまり「月◯万円までに抑える」という調整が意味を持たなくなります。加入を避けたいなら、金額ではなく働く時間を週20時間未満に減らすしかありません。
ただし週20時間未満に抑えると、当然ながら稼げる金額の上限も下がります。時給1,200円なら週19時間で月10万円ほどが限界。手取りを守るために働く時間を削る、という本末転倒になりかねません。
⑥判断の目安:学生かどうかで分かれます
ここまでを踏まえると、分かれ目は年齢ではなく学生かどうかでした。
扶養に留まる価値が大きい人
- 配偶者:第3号で国民年金が0円になる。壁を守る意味は大きい
- 20歳未満の子:そもそも国民年金の納付義務がない
- 20歳以上でも学生の子:学生納付特例で国民年金は0円
社会保険に入るほうが有利になりやすい人
- 卒業して学生でなくなった20歳以上の子:国民年金17,920円が必ずかかる。扶養で浮くのは健康保険料だけ



ただし例外があります。親の勤務先に家族手当・扶養手当があり、「年収130万円超で支給停止」といったルールがある場合です。月1万円の手当なら年間12万円。これが消えると計算がひっくり返ります。判断の前に、必ず給与明細で手当の有無と支給基準を確認してください。
⑦扶養を外れるときは、親の会社への連絡が必要です
子どもが社会保険に加入したら、親の側でも手続きが要ります。しかも事実発生から5日以内という期限があります。
健康保険 被扶養者(異動)届を親の勤務先へ提出する
子が持っている健康保険証(資格確認書)を返却する
バイト先が発行する「資格情報のお知らせ」を添付する(子から受け取っておく)
家族手当が出ている場合は、手当の変更届も忘れずに
届出が遅れても、資格を失う日は加入日までさかのぼります。その間に病院にかかっていると、健保が負担した7割分をあとから返還請求されることがあります。期限は守りましょう。
そして、いちばん間違えやすいのがここです。
わが家の結論
りんは9月1日からバイト先の社会保険に加入することにしました。
決め手は、扶養に留まっても国民年金17,920円が消えないこと。そして2026年10月からは週20時間で判定されるので、どのみち避けられない話だったこと。来年4月には就職して社会保険に入るので、それが半年早まっただけとも言えます。






よくある質問
- 扶養を外れると、親の税金は上がりますか?
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社会保険の扶養と税の扶養は別なので、社会保険を外れただけでは税金は変わりません。子が19〜22歳なら年収150万円までは控除が満額残ります。150万円を超えると段階的に減り、188万円で対象外になります。
- 学生納付特例と納付猶予は何が違いますか?
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対象者が違うだけで、どちらも「支払いを先送りする」制度です。学生納付特例は学生向け、納付猶予は50歳未満で所得が少ない人向け。どちらもその期間は将来の年金額に反映されません。10年以内なら追納できます。
- バイト先の社会保険は、断ることができますか?
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加入要件を満たすと法律上は加入義務が生じるため、本人の希望では断れません。避けたい場合は、勤務時間を週20時間未満に調整してもらうことになります。
- 保険料の正確な金額はどこで分かりますか?
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健康保険料率は加入する健保によって違い、都道府県でも変わります。この記事の金額はあくまで目安なので、バイト先に「本人負担は月いくらになるか」を確認するのがいちばん確実です。
まとめ
- 「扶養」には税の扶養と社会保険の扶養があり、判定も手続きも別々
- 「130万を守れば保険料タダ」は第3号がある配偶者だけの話
- 20歳以上で学生でない子は、扶養に入っていても国民年金17,920円がかかる
- 同じ収入なら、社会保険に入ったほうが手取りが多くなりやすい
- 2026年10月から金額の調整は効かなくなり、週20時間が判定基準になる
- ただし家族手当がある場合は例外。先に給与明細を確認する
- 扶養を外れたら5日以内に親の会社へ届出。税の扶養は残す
制度の話が続いてしまいましたが、要は「うちの子は配偶者じゃなくて子どもだ」と思い出せば筋道が見える、ということでした。同じところで迷っている方の参考になれば嬉しいです。
✅ 扶養と社会保険・確認チェックリスト(全10項目)
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本帰国の準備全体の流れは、こちらのガイドにまとめています。
※記事内の金額は2026年8月時点の制度・料率をもとにした目安です。健康保険料率は加入する健保組合や都道府県によって異なります。実際の判断は、勤務先の健康保険組合・年金事務所・お住まいの市区町村でご確認ください。







